世界から素晴らしいワインを産み出す生産者をご紹介します
各地に素晴らしいワインを産み出す生産者がいますが、ここではその中でも現在注目されている生産者をご紹介します。
【イタリア】カンティーナ・ライナ
カンティーナ・ライナ
Cantina Raina
ワイナリー名のライナは最初にサグランティーノを植えた土地の前オーナーの愛称。この名前にしたのは土地と歴史を残すため。
カンティーナ・ライナはウンブリア州にある「イタリアの最も美しい村」の一つとして知られるモンテファルコから東に約4kmの
小さな集落の中にあります。設立は2002年。ファブリッツィオ・マリアニ氏が、古い農家の家屋と12haの土地を購入したことに始
まります。標高は220m~300m。2002年から2008年にかけて葡萄を植樹。葡萄畑は10ha。赤ワインはコルドン、白ワインはグイヨ
に仕立てています。
現在のオーナーはファブリッツィオの息子で1978年生まれのフランチェスコ氏。彼は2002年にペルージャの大学で哲学を修め卒業
した後に、料理人の道へ。ウンブリア州のレストランで修業を重ねた後、2005年には調理師免許を取得。約2年間、ミシュラン星付き
のレストランで勤務。 そして2007年にワイナリーへ加わり畑仕事と醸造学び、現在に至るという変わった経歴の持ち主。現在は同じ歳で
農業と醸造を勉強し、フランチェスコの考える自然な葡萄栽培と醸造、そして理想とするワインのスタイルに共感したアンドレア氏との
2人が中心となりワイナリーを運営しています。
畑では原則としてビオディナミを実践。化学的な除草剤、殺虫剤などは一切使用していません。銅、硫黄に加えてイラクサ、トクサ、
ビヨウヤナギなどを煎じたものを散布。その他、ビオィナミの調剤である500番と501番のプレパラシオンを使用。土地本来のエネル
ギーを正常化、そして活性化を行っています。
収穫は全て手摘み。目指す醸造のスタイルは「自然で栽培され、土地の味が詰まった葡萄を、そのままワインに変えること」そのため、
発酵は野生酵母を使用しSO2も必要最小限に抑えるようにしています。 ワイナリーでは自然と技術の融合。目標はテロワールを表現した
ワインを造ること、しかし自然なワイン造りをし過ぎて味が濁っていてはいけない。あくまでも果実は透明であること。味わいがあるこ
とはもちろん、葡萄の個性を楽しんで飲むことができるワイン造り。 熟しすぎている葡萄を使用しないこと。酸がしっかりとある健全な
葡萄を収穫すること。そして、余計なタンニンを抽出しすぎないように、発酵期間は他の自然な造りをしている生産者と比べ比較的短いです。
樽を使用する際には葡萄品種本来の個性を損なわないように古樽を使用。そして最後に自動ポンプシステム付きのスレンレスタンクやソフト
プレス機などの必要な技術を取り入れること。また、ワイナリーの屋根にはソーラーパネルを敷き電機の一部を賄っています。また、セラーや
タンクの洗浄には敷地内にある池の水を使用するなど環境にも配慮するようにしています。 セラーのある建物には、ワインと共に郷土料理
も楽しむことができる予約制のレストランも併設。ここでは近隣のオーガニックやビオディナミを実践する農家の野菜や肉、そしてサラミや
生ハム、さらには野生のハーブなどを提供するイベントも行われています。ワインと食材、そして食事。スローフード、スローワイン。ウンブリア
の恵まれた自然を愛し、料理人としての経験も持つフランチェスコ氏ならではの考えが、そのままワイナリーとなっています。
【イタリア】カラヴァリオ
カラヴァリオ
Az Ag Caravaglio Antonino
1992年創業。当時よりオーガニック農法を導入。オーナーは一家の大黒柱で、いつも穏やかな笑みを眼もとに浮かべた物静かな
アントニーノ。しっかり者の奥さんエリザとお父さんにべったりの甘えん坊の娘アルダちゃん(2003年生まれ) の3 人家族で
サリーナ島のマルファ村に住んでいます。
■サリーナ島について :~映画「イル ポスティーノ」の舞台~ サリーナ島はシチリアの北に浮かぶエオリア諸島の中心に位置し、
周囲27km、人口約1500人の小さな島。水はフェリーで、電気も海底ケーブルでシチリアから運んできています。海底火山が海上に隆起
した完全なる火山性の土壌で、二つの火山(標高860mのポッリ山と標高962mのフォッサ・デッレ・フェルチ山)で 構成されています。
島はケッパーの産地として、また映画「イル・ポスティーノ」の撮影舞台でも知られています。(映画ではプロチーダ島の設定ですが
実はサリーナ島で撮影されました。
■畑について: 畑はサリーナ島とリーパリ島に持っています(エオリア諸島のどの島の葡萄で造られても、ワインはIGTサリーナになります) 。
オーガニック農法でサリーナの畑は春の花々が咲き乱れてまるで花畑のようでした。土を潰さないキャタピラー型の小型トラクターと鍬による
人力の鋤込で畝を起こし除草します。海からの水分を含んだ重たい風が常に低く畑に吹いているため、畑は両島とも無灌漑農法。 サリーナ島の
土壌は赤みがかった茶色で小石大の火山岩が散らばっています。リーパリ島の土壌は軽石と火山灰。しかもごくごく軽いふわふわの灰のため
フィロキセラの害を免れることができました。コリントネロは樹齢200~300年の葡萄から根分けされた自根のブドウです。三方を山に囲まれた
畑は外地から完全に遮断されており、畑には凝灰岩やときおり黒曜石なども見られます。
【イタリア】ジャンニテッサーリ
ジャンニテッサーリ
Giannitessari
ジャンニテッサーリの畑はアルフォン・ヴァレー(Alpone Valley)内、ロンカ村を中心に55haを所有します。
現在のオーナーは1963年生まれの醸造家ジャンニ・テッサーリ氏。彼は創業者のマルカートファミリーの元で醸造を担当していました。
そして2013年にワイナリーを譲り受けました。
現在は妻のアンナ・マリア氏、そして娘のヴァレリアとアリスの協力の元、ワイン造りに勤しんでいます。ジャンニ氏は素材である
健全な葡萄を通して、畑ごとのテロワールを削り出す作業を彫刻に例えます。畑のどのような土壌にどの品種を植えるか、その仕立て方、
選定、育て方など、彼は葡萄の樹が成長する前に既にそのイメージが先にあるそうです。そして絶対なる確信の元に収穫される葡萄から
ジャンニ氏はテロワールの姿を削り出していきます。メインの土壌は古カルヴァリーナ火山(Calnarina)が源の風化して砕けた玄武岩で、
典型体な火山性土壌です。
【フランス】シャトー・ド・バステ
シャトー・ド・バステ
Chateau de Bastet
ドメーヌ・ド・バステは南ローヌ、シャトーヌフデュパプより約北西に10kmほどのところにあるサブラン(Sabran)村にあります。
シャトー・バステ自体は17世紀頃から設立され、他家により養蚕農業そして酪農業として営まれていました。ワイナリーとしては
現当主のジュリー・オーベール氏(4代目)の曾祖父で当時リヨンでレストラン業を営んでいたジャン・オーベール氏により1930年代に
買われ、ドメーヌ・ド・バステとして設立。 現当主のジュリー氏のパートナーのニコラ・リシャルム氏の父はコルシカ島でビオディナミ
栽培のワインを造ってきた経験もあり、1997年から20年以上にわたりその経験則を活かしビオディナミ栽培を実践し、収量の少ない
クローン種に切り替え、自分たちの土地に合う方法を採用する研究を重ねてきました。現在の畑の面積は62haを所有するに至ります。
【フランス】フィリップ・エ・シルヴァン・ラヴィエ
フィリップ・エ・シルヴァン・ラヴィエ
Philippe et Sylvain Ravier
フィリップ・エ・シルヴァン・ラヴィエはサヴォワ県の県庁所在地であるシャンベリーの南、ミヤン(MYANS)村にある家族経営の
ワイナリーです。お父さんのフィリップさん(栽培・醸造担当)、お母さんのクロディーヌさん(マーケティング担当)、息子の
シルヴァンさん(栽培・醸造担当)の3人が中心となり、ワイン造りをしています。
この地区はクリューズ・ド・シャンベリーと呼ばれ、白葡萄のジャケール種やアルテス(ルーセット)種が多く栽培されています。
同じクリューズ・ド・シャンベリーで造られるジャケールでも、シャンベリーに近いアプルモンとその南に位置するアビームとでは
土壌が異なります。
アプルモン側は1248年のグラニエ山の大崩壊により、崩れた岩や石が堆積していて、石灰質中心となっており、畑には氷河が運んだ
大きな岩があちこちに点在しています。アプルモンで栽培されるアルテス(ルーセット)種やジャケール種は火打ち石のような若干
乾いたアロマを感じさせ、上品な酸とミネラルを含んだワインを造りだします。 アビーム側は氷河が時間をかけて岩などを削りとって
堆積したモレーン土壌が中心で、みずみずしく辛口でキレのあるワインが造られます。
【フランス】フレデリック・フェリ
フレデリック・フェリ
Frederic Fery
フレデリック・フェリはエシュブロンヌというペルナン・ヴェルジュレス村から直ぐの場所に本拠を構えます。
ワイン造りは1941年から始まり当初はネゴシアン業中心でした。その後本格的なドメーヌとしての活動を始め、1988年からドメーヌ業をスタート。
その後オーガニック栽培に着手したのは2008年。更に3年ほどかけて畑全体に広げ、2011年からは殆どの自社畑をオーガニック栽培で実現。
畑はモレ・サン・ドニ、ヴォーヌ・ロマネ等に22のAOCを所有しています。総面積は14ha。ワインのスタイルはエレガンスな飲み口を推進
しているため、全房発酵は行いません。エノログのロランス・ダネル氏の指揮のもと、「テロワールを大切にするワイン造り」をポリシーとしています。
【スペイン】ロドリゲス・サンソ
ロドリゲス・サンソ
Rodriguez Sanzo
ワイナリーは1810年、ルエダに創業。現当主は5代目のハヴィエル・ロドリゲスです。また彼の新しい拠点として2002年に
リオハにワイナリーを造りました。農業工学技術者でありMBAを取得した彼は、以前に近代醸造研究の総本山であるデイビス校
スペインにてSIS(土壌分析装置)の開発リーダーを務めた経歴を持ち、土壌分析とそれに基づく畑のマネージメントのスペシャリスト
として知られています。自分のワイナリーにその全てのノウハウを注ぎ込み、土壌の個性をリスペクトしたワイン造りに取り組んでいます。
『私はワインデザイナーだ』と自分をこう表現する彼は、土地の葡萄やワインの伝統を尊重しつつ、モダンスタイルを取り入れるなど、
個々のワインに対して様々な試みを行っています。例えば、木材を購入して樽職人にカスタマイズさせたり、醸造も科学的根拠に基づいた
最新技術を取り入れたりと、それぞれのワインから、彼の緻密さが垣間見える造りとなっています。これまで多くのワイン品評会にも
出品をし、評論家からも高い評価を得ています。今日においても新商品開発の勢いはとどまるところを知らず、常に新しいワイン造りに
チャレンジしています。
【ギリシャ】ミロナス・ワイナリー
ミロナス・ワイナリー
Mylonas Winery
1917年に設立されたミロナスワイナリーがあるのはギリシャの首都アテネの南40kmほどのケラテア。現在の当主は3代目の
スタティマス・ミロナス氏です。ギリシャのイオアニナ大学で化学を専攻し、その後WSETのディプロマを取得。この資格は、
4段階ある認定資格の最上位で、ワイン生産者の取得は珍しいものです。
「科学的な根拠は当然のこと、自分自身のテイスティング能力でワインを見極めたい」と信念を語る彼のワインは、品種の
個性を大切にした味わいに仕上げることで伝統への尊重が表現されています。 所有する畑はアッティカ半島に複数あり、合計12ha。
ギリシャ国内ではワイン造りで最も古くからの歴史があるこの地域は、夏でも涼しい乾燥した海風が吹くのが特徴です。
20世紀半ばまでは鉄鉱石の採掘がさかんだった地域で、畑はライムストーンとシストの土壌となっています。 白ワインは生産量の
半分がステンレスタンクを使用した発酵でしっかり温度管理されています。引き続きの一次発酵に使用する樽は、側板にオーク、
鏡の部分にアカシアを使用した樽。このこだわりは、樽の香りを調整するために重要なポイントとなっています。
【ハンガリー】パンノンハルマ
パンノンハルミ・アパーチャーギ・ピンツェーセト
Pannonhalmi Apatsagi Pinceszet
~ハンガリーのワイン~ ハンガリーでは紀元前からケルト人によるブドウ栽培が行われていましたが、本格的なぶどう栽培は
ローマ人に受け継がれ、旧東欧圏の中にあって最も古いワイン造りの歴史をもつ国です。
Pannonhalmas (パンノンハルマ) ハンガリーの首都ブダペストから西へおよそ100キロ。公式認定栽培面積は3944ha。
その内3236haが格付けⅠ級です。潜在能力が高い区域ながら現在の植樹面積は618haのみです。
世 界 遺 産 ~ The World Heritage ~ Millenary Benedictine Abbey of Pannonhalma and its Natural Environment パンノンハルマの
ベネディクト派大修道院とその自然環境が造るワイン パンノンハルマのブドウ畑にかこまれた丘の上に修道院が建っています。
996年の創設より 1000年もの間、ぶどうを収穫してワイン作りに力を注いできたベネディクト派修道士たちの住むパンノンハルマ修道院です。
現存するハンガリー最古の修道院は今でも学校や修道院として使われており、ブドウ畑のある丘と森も含めて1996年に世界遺産に登録されました。
昔から修道士たちが丹精して作るワインはその品質が評価され外国にまで知れ渡っていました。特に評判になったのは「パンノンハルマ・リスリング」
こと「オラス リズリング」です。アーモンドやモクセイのような香りと滑らかな舌触りのこの白ワインは、ハプスブルグ家のマリアテレジア女王にも
愛されました。女王はそのしるしに金糸で刺繍されたミサ服を修道院に贈っています。しかしパンノンハルマ・リスリングは、第二次世界大戦後
ハンガリーが社会主義体制になると贅沢品としてもう造ることが許されませんでした。フィロキセラの来襲と、2度にわたる世界大戦、
その後の共産党独裁政権による修道院のワイナリーと畑の差し押さえにより、修道院のワイン造りはしばらく壊滅的となりました。
しかし2000年よりハンガリーの国営銀行の協力で再建。修道院が再び古くからの伝統のワインを復活させようとぶどうの木を植樹。
今、やっと実を結び始めたぶどうには修道士たちの期待と誇りが詰まっているのです。栽培面積50ヘクタール。
【ルーマニア】ラ・サパタ・クラマ・デルタ・ドゥナリ
ラ・サパタ・クラマ・デルタ・ドゥナリ
Crama Delta Dunarii
LA SAPATAクラマ・デルタ・ドゥナリは、ワイナリー名にもなっている、ルーマニア東部トゥルチャのドナウ・デルタという
エリアにあります。 ここは人の手がほとんど入っていない自然の三角州(デルタ)で世界遺産にも登録されており、3,400種類以上の
魚と320種類以上の野鳥、そして1,100種類以上の植物が生息しています。
広さは東京都の約2倍にも及び、その9割が湖や沼です。 畑がある場所は元々痩せた砂質の土地で、長年放置されていたことで
野草に覆われていました。しかし、長い間人の手を加えずに休閑していたことで、自然のままに土壌が活性化し、高品質な葡萄を
造るのに適した豊かな土壌となりました。
LA SAPATAはイタリア人オーナーのロベルト・フィリポ氏と農業家ロベルト・ピエロニ氏によって2009年に設立されました。
元々イタリアでワイン造りをしていたフィリポ氏と、ルーマニア在住の農業家ピエロニ氏の出会いがきっかけとなり、ワイン造りの
伝統、魅力的な歴史、魔法のような豊かな自然と人々とのバランスに魅せられ、ドナウ・デルタでワイン造りを始める決心をしました。
さらにドブロジャのソモバという場所に絞ったのは、気候がイタリアのウンブリアに似ていて、そして一番ミネラルが多い土地だという
理由からでした。 彼らの目的は「ドナウ・デルタという最良の環境で、最高のワインを造る」ことだけではありません。ルーマニアの
深刻な経済状況を鑑み、「雇用を安定化させること」、「人と技術の流出や土地の放棄を防ぎワイン造りの伝統を守ること」を目指して
います。 ワイン造りにおけるテロワールの可能性を越え、地域への社会貢献という点でも重要な一面を持っているのです。
【チェコ】ジョージ・ウヘレク
ジョージ・ウヘレク
Jiri Uherek
2,000年もの悠久の歴史があるといわれるチェコのワインは、プラハの北のボヘミア地方や、南部のブルノの南のモラヴィア地方で
多く生産されています。その歴史に関する記録によれば、中世には貴族や商人に親しまれ、のちにポーランドやウィーンの王宮から
も注目されるようになったという記述も残されているそうです。
ジョージ・ウレヘクがあるのはモラヴィア地方で、VOCブラトニーチェエリア。 畑は、モラヴィア地方のモラヴスキー・ジシュコフと
ドルニー・ボヤノヴィツェという2つの村にあります。所有面積は合計8ha。そのほとんどが南西向きの広大な農園で、丁寧な手摘み
による収穫が行われています。 ワインに表現されるテロワールは、白亜質の混ざった肥沃な土壌からもたらされるミネラルや酸、
白ワインにも特徴的なアロマとして現れているところもその魅力となっています。 ライトなもの、フルボディなもの、いずれのタイプも
伝統と新しい技術の融合により、質の高いものに仕上げられており、こだわりと誇りをもって生産に取り組んでいるワイナリーです。